9,その他

スポーツトレーナーが読んでおきたい書籍/本の紹介 PART2

deda

ここでは、私が書かせて頂いた書評について掲載しております。

なお、全てアタックネットの書評コーナーにて掲載されております。

原文はこちらからも。

 

1,笑顔の習慣34 仕事と趣味と僕と野球

2,筋肉の栄養学 強いからだを作る食事術

3,筋膜の徒手療法 機能障害の評価と治療の全て

4,リーダシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力

5,ザ・スコアラー

6,姿勢と運動の力学がやさしく分かる本

7,野球を科学する

 

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1,笑顔の習慣 仕事と趣味と僕と野球

著者;山本昌
出版社:内外出版社

筆者の山本昌投手は実に記録に満ちた大投手です。実績から見ても50歳まで現役、32年間の実働と現役で中日一筋、219勝で殿堂入り、41歳でノーヒットノーランを達成されています。そんな山本投手が現役を引退して、セカンドキャリアを歩みながら現役時代を回顧しています。背番号にちなんで34個のエピソードがあり、丁度よい文章量で読みやすく構成されています。

32年間も現役を続けられた要因として、興味深い点を仰っています。それは、実はマイナス思考で緊張しやすい性格という点です。その不安を補うためにダンベルを毎日握って手首を鍛える小さな努力を継続しています。また、女房役である捕手のサインには首を振らなかったそうです。

納得できなければ、あえてボールに外しています。それは、投手よりもバッターを間近で何試合も見ている捕手を信じているからです。そして、先発として序盤で打たれたとしても決して「投げない」(投げ出さない、あきらめない)と述べています。投げ出してしまうのは周りにいる選手にも失礼にあたります。何より一生懸命投げることが、219勝という結果につながっています。

また、出会いの大切さやピンチのときこそチャンスであったと回顧されています。入団後、なかなか選手としての目が出ずにドジャースキャンプに半年間参加した際、2人の恩師に出会うことができ、ここからブレークされています。
そして興味深い話として、強いチームの条件は、よい選手がよい習慣を行うと述べています。2016、2017、2018年とセ・リーグを3連覇した広島東洋カープの強さは、チームの土壌にあると解説されています。 また、それは落合監督時代に無類の強さを誇った中日ドラゴンズも同様です。ドラフトでよい選手、つまり「苗」を取ってきても、それを育てるチームである「土壌」がよくないとよい花は咲かないというたとえは納得の話です。

この話を読みながら、私もかつて優勝争いをしていた在阪球団の体力測定イベントのスタッフで施設内を見学したときに、大ベテランの選手が若手選手に交じって精力的に汗をかいていたのを思い出して腑に落ちました。

この書籍は、現役のアスリート選手やビジネスマンに読んでほしい一冊です。本書では、現役時代を振り返ってセカンドキャリアにおいて何が大切かについて述べられています。アスリートには必ず引退が訪れます。きっと、現役時代の経験を活かすヒントが見つかると思います。

2、筋肉の栄養学 強いからだを作る食事術

著者;川端理香
出版社:朝日新聞出版社

昨今、パーソナルトレーニング施設の増加や、身体に対する健康意識の高まりにより、ネットや書籍などで栄養の情報が多くなりました。プロテイン販売の売上規模が増加し、コンビニエンスストアでもサラダチキンなど高たんぱくを意識した食材を目にします。

私たち人間は基本的に三食のご飯を食べます。その食事で何を選び、どれくらい食べればよいか、また食事全体のバランス量はよかったのか、日々悩ましい問題です。
この書籍は長年アスリートの側で食事について見守ってきた管理栄養士による食事のお話です。帯には「食事で筋肉を作る」と入っており、食事で体質改善を目指す方にはぜひ手に取って欲しいです。

まずは各5大栄養素の話から、具体的にどのように食事を摂っていくか、そして最後に経験談、Q&A形式という構成です。管理栄養士による食事指導は、「怒られる」「否定される」という認識がアスリートにはあり、よくチームの就任時には選手から、また怒られるとぼやかれたと述べています。だからこそ、食事の見直しは、選手が継続していく内容と改善する内容を明らかにすることが栄養指導の始まりです。あるサッカーチームではシーズンの終盤に除脂肪体重を上げたというエピソードがあります。食事の意識改革を行い、成功した例であり大変興味深いです。

著者は、最後にこれまでの経験を振りかえった際、食事環境の重要性を述べています。それは、チーム事情や移籍、結婚、海外、子どもの有無、寮生活、学校生活、友人関係、職場と多岐に渡り、環境は年々変化します。そのためにはまず食事に関する知識を得ておく必要があり、その知識を本書から得ることができます。

私も昔、太っていたときは暴飲暴食気味でしたが、和食を中心に食事の見直しを行い、痩せることができました。今現在は少し太ったので改めて食事を考え直すよいタイミングです。本書の通り食事を改善するのも難しいです。

なかなか一度にできることではなく、何度も自分で試す必要があります。

ですが、試す価値は十分にあります。食事が義務にならず味わって食べるご飯は美味しいです。ぜひ、普段の健康に意識を持つきっかけになることを願っています。

3,筋膜の徒手療法 機能障害の評価と治療の全て

著者;leon chaitow 訳:斎藤昭彦
出版社:医道の日本社

近年、治療家やパーソナルトレーナーでも外せないフレーズの一つとして「筋膜」が挙げられます。

また、筋膜はテレビや雑誌に特集が組まれるほど一般の方にも広く浸透しています。国民に広く浸透している筋膜だからこそ、私たちは科学的に裏付けされた知識を知る必要があります。その点、この書籍は2018年に出版されており、最新の知見が盛り込まれています。

本書の内容と構成はとてもシンプルです。2つの大きなテーマに沿っており、そのうちの1つ、筋膜の基礎が5つの章にまとめられており、もう1つとして筋膜への具体的なアプローチ方法を15紹介しています。また、これらは科学的根拠(エビデンス)を基に語られています。

具体的な筋膜へのアプローチ方法としてマッスルエナジーテクニック、ロルフィング、トリガーポイント療法など様々な方法が紹介されています。筋膜へのアプローチ方法の全体像を把握するには、うってつけの書籍です。

アプローチ方法について共通して言えることがあります。それは、筋膜という組織を変性させるという目的については全て一緒です。ならば、「筋膜」という組織の正体は何で、どのような方法で変性が起きるのか?

また、筋膜が歪むと身体への影響は何か? 筋膜を変性させると体の中で何が起きるのか?といった疑問を投げかけてくれます。きっと日々の臨床やセッションの中で悩ましい問題にヒントを与えてくれます。

私自身も過去にIASTMを使用していた時期があります。その経験も踏まえて、書籍を通して新たな発見とヒントを感じています。

また、筋膜が良い意味でも悪い意味でも世間に広まったことで、患者様・クライアントの中にはマスメディアを通じて筋膜を知っている方が多くいらっしゃいます。そのために、正しい情報と誤っている情報を取捨選択できる基準が必要です。

治療家やパーソナルトレーナーである身体に関わる専門職にとって、最良の喜びは患者様・クライアントからの感謝ではないでしょうか。筋膜の改善に関してサービスを提供している治療家・パーソナルトレーナーは、ぜひ正しい情報をもとに一人でも多くの患者様・クライアントの抱えている「不」が解消されることを願っています。

4,リーダシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力

著者;荒木香織
出版社:講談社

本書の著者は、2015年ラグビーW杯で南アフリカを破った元ラグビー日本代表チーム・ヘッドコーチであるエディー・ジョーンズ氏(以下 エディーHC)の右腕としてメンタルコーチを務めた荒木香織氏です。

全体の構成として、1章・2章はラグビー日本代表の軌跡と実際の経験談を踏まえてリーダーシップのあり方を説かれています。この中には、実際の選手とのやりとりや、4年というプロセスを経た経験談が含まれており、この頃の日本代表チームの様子をリアルに感じることができます。

また、3章・4章・5章については著者の考えるリーダーシップの方法論やリーダーシップのトレーニング方法について知ることができます。ここでは、数多くの企業やスポーツチーム等のコンサルタントとして経験している著者だからこその言葉の深みがあります。

著者は、本書の中で今日の日本において組織の課題は「リーダーシップの欠如」とし、かつての日本のようにカリスマ性によるリーダーシップでは企業の生産性は下がるデータも示しています。

では、リーダーとして求められる成果とは、フォロワー(従業員・部下)がリーダーの予想を超えた結果を出すことです(事実、南アフリカに逆転したトライを生む前のスクラム前に発せられたエディーHCの指示は、キックで3点を取り同点にする事でした)。

フォロワーの成果を最大限に引き出すのが、良いリーダーです。また、スポーツチームもビジネスにおいても勝利という結果に向かって進むことに変わりはありません。組織という点では、会社もスポーツチームも同一です。そこで、本書の3章・4章・5章では、実際のリーダーシップの見本例をケーススタディとして学ぶことができます。

また、リーダーシップを学ぶ上で必要なマインドセットの捉え方と、考え方やレジリエンスという逆境でも屈しないスキルの考え方を学ぶことができます。

日本は、かつて高度経済成長により発展した先進国です。先人の努力に敬意を表しつつも、時代の流れの変化により、かつての日本型組織では、これからのグローバル化に遅れを取ります。今後もますます変化していくであろう時代に相応しいリーダーの誕生が待ち遠しいです。

著者は、研究者として教育者としてコンサルタントとして、様々な顔をお持ちです。本書は、エディーHCというリーダーを招いて世界で結果を残した最たる例です。ぜひ、リーダーは本書を通して部下に還元してみてはいかがでしょうか?

ザ・スコアラー

三井康浩著 
角川新書

この書籍の著者は、読売巨人軍のスコアラーとして40年間務められた三井氏です。どのように試合からデータを収集し、そこから選手に言語化してどのように伝えるかというスコアラーの経験をまとめた一冊です。

序章では、あの伝説として謳われる09年WBC決勝の韓国戦にてイチロー選手が放ったセンター前ヒットの逸話から始まります。
第1章では、スコアラーになる経緯やそのときのエピソードが中心です。第2章では、スコアラーから見たバッターの特性。第3章では、スコアラーから見たバッテリーの特性を知ることができます。第4章では、スコアラーの視点から編成部や外国人スカウトの手法を知ることができます。

著者がスコアラーとして動き出したのは1980年代中盤です。今の時代でこそ、ITソリューションが発達して映像やデータのやりとりが活発に行われます。しかし、当時はビデオカメラが主流です。逆を言えば、昔の方がデータの収集が大変だったはずです。現代と過去の違いにも著者は隔世の感があると述べています。昔を思えば莫大なデータの扱いの大変さは容易に想像がつきます。

昔は予告先発がなかった時代で、誰が先発か、またバッターが待っている球種は何かをスコアラーが呼んでいました。相手先発バッテリーの配球から傾向を読んだりと、アナログにデータを集めていた苦労を感じ取ることができます。

ちなみに本稿の著者は島根県の出身です。私も島根県出身ですが、この書籍を手に取るまで存じ上げませんでした。同じ県の出身者で、野球界に寄与した方で大変嬉しくなりました。山陰にちなんで裏方で活躍されたのは納得です。
野球の真髄を別角度から感じ取ることができ、プロ野球を何倍にも楽しむことができるお勧めの書籍です。

6,姿勢と運動の力学がやさしく分かる本

勝原純司・山本恵三 著 江原義弘 監修
ナツメ社

この書籍は、バイオメカニクスの基本を、イラストを使いイメージしやすく初心者が理解するために書かれた一冊です。

全6章のパートに分かれており、1章から順を追って語句が解説されており、物理学をおさらいするにも適した書籍です。
第1章は「力と重心」として重心位置の解説や、ベクトル・力のつり合い・作用反作用の法則といった、重さが働くとどのように変化するか解説されています。

第2章は「床反力と身体運動」として床反力や床反力ベクトルといった床から受ける重心位置の移動について、第3章は「並進運動と運動の法則」として、速度と加速度や慣性の法則・並進運動といった移動に伴う速さについて解説されます。

第4章「回転運動とモーメント」では、テコの原理をモーメントやレバーアームといった力のつり合いについて、第5章「エネルギーとパワー」ではパワーや仕事率、力学的エネルギーといった物体を動かす働きについて、最後の第6章「運動量と力積」は、運動量とは何かについて、ジャンプ動作と力積が解説されています。

中学校時代に習った物理学の単語も数多く使われていることがわかります。表紙にも医療従事者や介護関係・スポーツトレーナーなどにお勧めと書かれており、イラストの豊富さが振り返りの学びによく合います。本書を手に取っていただき、物理学の視点から現場に活用していただきたいと思います。

7,野球を科学する

笠原政志 著
竹書房

本書は、全300ページにおいて打撃・投球・走塁・身体のコンディショニングなど、野球に関するテーマを言語化した書籍です。実験から得られた結果を数値で示しており、実に興味深いです。

第1章では、打撃について速いスイングスピードの獲得と除脂肪体重の必要性を述べており、打撃を客観的に見ることができます。第2章では、投球について脚と股関節の使い方の研究結果と、コントロールをよくすることについて述べています。リリースポイント改善のドリルの解説も掲載されています。第3章では、走塁という分野も研究されています。足の速さについて、ある能力の重要性が必要と述べています。第4章から第7章までは、ウォーミングアップや疲労回復、睡眠、筋力トレーニングなど、専門のコンディショニングについて研究されている情報を知ることができます。

より遠くにボールを飛ばしたい、もっと野球がうまくなりたいという情熱を持ち、練習に取り組んでも身体を痛める可能性や、効率的に技術が伸びない場合もあります。著者は、体育学博士・アスレティックトレーナーの観点から、野球を楽しむ全ての世代にケガや故障を最小限に抑えて欲しいという想いをお持ちです。数十年と野球コンディショニングを研究してこられた著者の情報を取り入れて野球を楽しんで欲しいです。

私も学生時代に読んで活用したかったと感じました。ケガや故障を最小限に抑えて効率的に技術を伸ばすために、必要な情報がこの書籍にはあります。

 

 

 

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